恋の戦國物語
何かまた失礼な事いってきそうで、自然と心の中で構える。
「いや、あまりにも細い故」
「あ、うん、そう。何かありがと」
何故にお礼を言ったのか自分でも分からないけど、何気に嬉しかったりした。
小十郎は意味がよく分からないみたいで首を少し傾けると、また締め始めた。
ふふ…、何か可愛い。
あっという間に締め終わり、ずれている所もなく巻かれた、文句なしの出来栄えに目を輝かせた。
特に、太い帯の巻いたところが1ミリとも上や下にずれてないところが、これまた凄い。
小十郎はあたしから離れると、あたしを舐め回すようにジロジロ見るなりクスリと笑った。
「馬子にも衣装か」
この人…!
普通に傷つく言葉をさらりと言ってきた…。
いや、あたしを誉めてるのか、貶してるのかは分かんないんだけど…。
言われた人からしたら失礼極まりないよ、本当に。
さっきから、あたしをなめてかかってるし…だいたいこの世に“馬子にも衣装”とかそんな簡単に言い表せることわざを作っちゃいけないわよ。
何故か、小十郎と喋ってると一人でノリツッコミしちゃってる自分がいる。
あぁ、もういいや…。
小十郎はこんなに喋る人だったか?と頭を悩ませながらも、もう考えるのはやめた。
もうこの人はツンデレでいい。
うん、もうそれでいっか。
「小十郎ありがと。で、あたしはこれからどうしたらいいの?」
ふぅ、とちらっと小十郎を見てみるが、小十郎は目を合わさないまま。
何なの、一体。
「白粉…」
ふと小十郎が口にした言葉。