恋の戦國物語
やっとの思いで先生からの長い長い注意事項が終わり、皆の求めていた言葉が大きく耳に届く。
「くれぐれも怪我だけには気をつけて!では、解散!」
――わぁああっ
先生が言った瞬間いっせいに立ち上がり、小学生のような行動に少し笑う。
よし、あたしも、百合を見つけないと。
すっ、と立ち上がると百合はもう横に立っていた。
「あ、百合!早いね」
「でしょ?じゃ、行こっか!」
そして、そのまま百合と一緒に笑いながら、ゆっくりと目的地である米沢城へと足を運んだ。
涼しい風が吹く。
「百合、あれじゃない?」
あたしは米沢城らしき屋根の部分が少し見えたため、指差す。
「よし、じゃあ行ってみよう!」
――…
それから、数十分がたったのだろうか。
ようやく米沢城であろう城の前へと着く。
「うわー!すっごい大きい!」
「米沢城ってこんなだったんだあ」
あたしと百合は、感嘆の声をあげながらカメラでカシャカシャッと撮っていく。
「中に入れるのかな?」
あたしより前に歩いていた百合は興味津々にばっと振り返る。
もし観光とかできるようになってるなら行けると思うけど…。
「行ってみる?」
百合は「うん!」と笑いながら頷いて、またどんどん歩いていく。
あたしも微笑みながら、黙々と城を見上げながら百合についていった。
少し歩いていると不意に、一瞬視界が霞んだと思うと頭に激痛が走る。
「っつ…」
百合が何事もなく進んでいく中、だんだん足が重くなっていく。
な…にこれ…。
自然と目をこするが、そのまま闇に侵食されるように視界が霞んでいく。
いきなりの頭痛のせいで、百合、と叫ぶ力もないままとうとう視界が真っ暗になる。
誰かっ…!
…――あたしは一瞬にして意識を失ってしまった。