恋の戦國物語
小十郎は気を利かしたのか、あたしの肩を押した。
「まだ寝ておれ」
「もう大丈夫」
寝かそうとする小十郎の手に抗い、無理矢理起き上がる。
政宗の時だって、何か上から見られてるの恥ずかしかったし。
布団から出ようとするあたしを寝かせようと、あたしの肩を押していた小十郎の手が滑った。
「「……っ!!!」」
瞬時、あたしと小十郎が声にならない悲鳴をあげた。
小十郎は、ばっと手を離し、顔を赤らめそっぽを向く。
続いてあたしも顔を赤らめ、咄嗟に俯いた。
…一瞬の出来事だったけど、肩を押した力の分、思いっきり触られた。
………胸を。
「そ、そんなつもりは、なかったのだからな」
「わ、分かってるわよ。わざわざ言わなくて、い、いいから」
他人から見れば、あ、あんまり大したことないだろうけど、初めてだったんだから、ね!
…よ、よし、忘れよう。
「で、でだ。何があったんだ」
明らかに動揺している小十郎は、平素を装い、話を戻す。
あたしはちゃんと座り直してこくんと唾を呑んだ。
「まだ…誰にも言わないでね?」
「…承知した」
小十郎はすぅっと息をつくと、やっとあたしの目を見て聞こうとしてくれた。
あぁ、時と場合によってすぐに切り替えられる人ってすごいな…。
小十郎の態度に、自然と気持ちが落ち着き、いよいよ口を開いた。
「実はね――」
あたしは小十郎に、政宗の部屋に入った後、目をじっと見つめられたと思ったら、悲しげに「一人になりたい」と言われて追い出されたことを言った。
小十郎は、何かわかるのかな?