恋の戦國物語

最後までいい終えたあと、涙が頬を伝っていることに気付いた。

何故だろう。

何でここの世界のことで、こんなにも悩んだり、泣いたりしなきゃいけないのだろう。

いろんなことに対して全てが虚しくなって、何もかもが分からなくなる。

今日でどれだけの涙を溢しただろうか。

喋り終えても、顔色何一つ変えず、あたしの目をじっと見つめたままの小十郎。

そんなに見つめないでよ。

目が離せなくなるじゃない。

あたしも、ぼうっと無表情のまま小十郎の目を見つめる。

といっても、止まらない涙のせいで視界がボヤけたままだけど。


何も言えずに俯きそうになったときに、あたしの頬に何かがあたった。

小十郎はいつの間にか儚げな表情をしていて、右手で優しくあたしの涙を拭っていく。


政宗も、小十郎も、すごく優しい。

でも、こんなにも気を遣わせるような事をしているのは、あたしが…しっかりしていないから。


小十郎は涙を拭うだけで何も言わない。

それは、あたしに対しての優しさ。

一切、同情したり慰めたり、突き飛ばしたりしない。

ただ、やれることをするだけ。

それこそが小十郎の優しさなのだと分かった。


「…こじゅ…っ」

もう大丈夫だから、と言おうと口を開いた瞬間、また、温かいものがあたしの体全体を包み込んだ。


小十郎は、政宗と違って何も言わない。

小十郎は真正面から柔らかく、あたしの背中に手を回しているだけだ。

すっきりするまで泣け、ということなんだろう。


ここで小十郎が何かを言ったら、あたしが期待をしてすっきりするまで泣けなかったり、逆に嫌なことを言われて余計な涙を流したりすると考えたからなのかな…多分。