恋の戦國物語

◇ 愛side ◇

ガラッ

「愛姫、朝ですよ。起きてくださいな」

ほんのりと甘い香りがする布団にくるまり、しんと静まった部屋が、戸を開かれたと同時にいきなり騒がしくなった。

「んー…」

家で二度寝なんてしょっちゅうなあたしは、布団をモゾモゾと頭まで被る。

「愛姫、朝餉の用意ができそうなので、そろそろ起きてください!」

その声と同時に、ばっと布団があたしからはがされる。

ん…この声は…。

「き、た…さん」

小十郎の姉、喜多さんだった。

「ほら、起きてください」


優しい声で、はきはきと喋る姿はもう2、3時間前から起きているような声色。

髪までしっかりと結ってあり、そして「今日も1日をむかえるぞ」と言わんばかりにびしっと着こなしている着物。

「はぁい」

あくまでも未来からの客のだから、いつまでもグータラしているわけにはいかないしね…。

むくりと布団から起き上がると、はい、と喜多さんから服を貰う。

…服というより、着物だな。

今日は、喜多さんに締めてもらうことになった。

「すみません、喜多さん…」

「何言ってるの、改まらないで」

そういって、口角を緩め柔らかく微笑む喜多さん。

「ふふ、ありがとうございます」


喜多さんはこのお城にいる女性の中で、唯一あたしに友達感覚で喋ってくれる人。

“愛殿”から“愛姫”に変わってるけど、本当、誰がそう呼ぶように言ったんだろう?

あたしも、皆が普通に接してくれる方が嬉しいんだけどな…。

モヤモヤするけど、喜多さんは普通に話してくれるだけ、嬉しく思おう。


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