恋の戦國物語
喜多さんにささっと着付けをしてもらい、広間へといそぐ。
入ると、広間にいたほとんどの人がこちらを見る。
「愛姫様、早うございます」
「おはようございます!」
広間には政宗様と小十郎もいたけど、話せるほど至近距離でもなかったし、政宗様に関しては一度もこちらを見てくれなかった。
やっぱり…昨日あたし、政宗様に対して何か嫌なことしちゃったんだ…。
うなだれて、俯きながら少しずつ食べる。
ちょうど食べ終わって、隣にいる女中さんや喜多さんに「ごちそうさまでした!」と満面の笑みで手を合わせる。
やっぱり、接し方が変わっても、量や味には変わりなくとても美味しかった。
立ち上がると同時に小十郎が近寄ってきた。
「どうしたの?」
「ちょっといいか」
難しそうな顔をしている小十郎の後を、不思議そうにしてついていく。
部屋を出て、暫くしてついたのは大きな池のある庭。
今日はまだしっかりと見ていない、青い空を見上げながら背伸びする。
「いい天気だな…」
ふと視線を空から声のした方にうつすと、庭に出て空を見上げる小十郎。
「そうだね」
そう返して、小十郎のいる庭に飛び出すと池の前でしゃがみこみ、すいすい泳ぐ鯉を目で追いかける。
「それは、鯉、という魚だそうだ」
水面には、あたしの後ろから池を覗いている小十郎が映る。
「ふふ、知ってる」
あたしと小十郎は、意味のない会話をしながら鯉を見つめる。