恋の戦國物語
文を片手に、庭へと足を進める。
「ふー…」
城内では、皆俺を一人にしてくれるから気が楽である。
ぞろぞろと側を歩かれるのも…あまり好きではないからな…。
文に書かれている俺の名には一文字ずつしっかり書かれていて、送り主がどれほど几帳面なのかが分かる。
角を曲がり、ふと着いた庭に目をやる。
…っ。
何故ここにおるのだ、小十郎。
そして…愛。
小十郎は何食わぬ顔でこちらに向かって立ち上がった。
愛については気付いていないのか屈んだまま池の方を見ていた。
第一、小十郎は俺がここにくるのを分かっているはずなのに…わざとか?
「…小十郎」
「…は」
小十郎は普通に返事をすると、真顔で俺に数歩近寄ってきた。
「…」
俺が声を出したと言うのに全く振り返る気配のない愛。
はぁ…。
とりあえず庭に出て、青空を見上げる。
「…ここに来るなど、珍しいな」
小十郎は愛をちらりと見ながら、俺に目配せしてきた。
…どういうことだ、小十郎。
小十郎が愛を見てため息をついたと思うと、俺のほうに歩み寄ってきた。
俺は、ずっと腕を組みながら柱に寄りかかりむっとしていた。
「政宗様」
小十郎が何かを決したように鋭い目付きで俺の名を呼ぶ。
「…何だ」
ゆっくりと口を開いた小十郎の言葉は、俺にとって驚くような嬉しいような言葉だった。
「…愛が、政宗様に話があるそうで」
え…?
あ、愛が、俺にか?
「…っ!!小十郎!?」
突如、愛がいきなり立ち上がるなり、怒声が混じった声で叫んだ。
もう、何が何だか分からない。