恋の戦國物語
――…
ドタドタドタ…
『大変だ、梵天丸様が失明しなされた!』
『母様、目が…飛び出しちゃっ――』
『き、きゃぁぁあーっ!』
『え…、母様…?母さ…』
『ば、化け物っ!私に近寄らないでちょうだい!』
『梵天丸だよ…ねぇ、母様…』
『貴方は私の子ではないわ!私の子は小次郎一人よ!』
『な…何……でぇ…、っく…ふぇぇ…――』
――…
「っ…」
俺がぽつぽつと話した過去の事に、愛は酷く顔を歪ませた。
きっと、俺も顔がひきつっているだろう。
「…情けないであろう?」
自分でも、強がっているだけだと言うことはわかっているが、弱みを見せたくなくて作り笑いをしながら自分を嘲笑った。
「この手で母親を亡き者にした俺が醜いであろう?結局、俺は…さ――」
キュッ…
「あ…い?」
「それ以上言わないで」
突如目の前に甘い匂いのした愛の髪の毛が舞った。
「――…」
俺は今、前方から愛に抱き締められているという状態になっている。
「自分をそんな風に言うのはやめて」
――…そうだ…。
自分に対して自分を侮辱するような言葉を吐き捨てて、俺は何がしたかったんだ?
「愛…」
愛の肩をぐっと離して、至近距離で愛の瞳を見る。
母親に似た…真っ黒い瞳。
でも、愛の瞳には反射で白く透き通った光がある。
しっかり前を見ている証拠だ。
「…いいな…綺麗な瞳を持っていて…」
「まさむ…」
「そんな綺麗な手で、人殺しの俺を触ったら汚れる」
…でも、愛の気遣いが逆に、自分を変な方向へと曲げてゆく。