恋の戦國物語
――…
スー…カタン…
「………はぁ…っ…」
あのあと“やらなければいけない事がある”と言って、政宗の部屋から出てきたあたし。
何故か、そうそうため息がでました。
部屋から出ても、残るは唇の感触。
唇にそっと指を添えてみれば、先ほどの政宗のどアップが思い出されて、ボンッという音でも聞こえるのではないかと思うほど顔が真っ赤になった。
…何考えてるんだ、あたし。
丁度、昼食の準備をしているのかバタバタと忙しそうに動く女中さん達。
あたしも手伝いたい、なんて言ったら、嫌味だとか皮肉だと思われるかな…。
ぼーっとしながら廊下を歩いていると、前方に見覚えのある女性が見える。
「お松さんっ!」
慌ただしくお皿などを運んでいたお松さんに、思わず話しかけてしまった。
「あ、愛姫様!今朝はどこかお元気がないようにお見受けしたのですが、大丈夫ですか?」
心配そうな顔で申し分なさそうにあたしの顔をまじまじと見つめるお松さん。
もしかして…朝食のとき、そんな顔に出ちゃってたのかな…。
何となく恥ずかしくなってしまったあたしは、ふるふると首を振ったあと、にこりと笑った。
「全然大丈夫ですよ!先ほど、解決…できたので」
政宗と……ぁあっ!
思い出してしまっ……
一人で思い出しながら慌てるあたしを見て、お松さんはふふ、と笑った。
「申し分ありません、愛姫様。お言葉ながら、頬が緩んでおります故、良き事があったのですね」
おっ…お松さん、鋭っ!
あたしの表情を見ながら、ふふふ、と笑う彼女が一瞬小悪魔見えた。
「では、昼餉の準備があります故、失礼致しますね」
「は、はいっ」
思いやりのある人だなぁと、微笑みながら、また慌ただしく去っていくお松さんを見送った。