恋の戦國物語
あたしは夢なんだと把握すると、パチンと頬を叩いてみる。
「ったあ…」
自分で叩いておきながら痛い。
…何で目が覚めないの?
明らかに現実ではないだろうけど…さ。
とりあえず、手の甲を軽くつねったりして、いろいろ試してみる。
しんとした森の中が風によってさわさわと鳴り、共に髪がそよそよと揺れる。
それは現実なのではないかと思わせるような心地よさだった。
まさか…いや、ないない。
あたしに限ってそんな…ね。
自分の頭に不意に浮かんだのは“タイムスリップ”という言葉。
でも、この世にあるはずもないし、逆にあったらおかしいし…。
あたしは、考えるほど痛くなる頭を使ってしばらくもんもんと考えていると。
――ジャリッ
背後から何やら小石の擦れる音がして、ビクッと体がはねる。
「おい何奴。そこで何をしている」
おそらく男の人なのだろう、少し低い声がする。