恋の戦國物語
びっくりした…。
ドキドキとした心臓を落ち着かせていると佐助が一瞬にしてあたしの前に来て耳打ちした。
「!」
「じゃあね…」
いい終えると、あたしの顔を見て意味深に微笑んだ彼はフッと黒い煙を残して消えていった。
佐助が残していった言葉に鳥肌がたつ。
“次に俺がここに来たとき、楽しみにしておいてね?愛ちゃん”
さ…佐助って実在してたんだ…。
ガラッ
“真田十勇士は存在しない”と信じていたあたしは、予想外の出来事に考え込んでいると後ろから突然襖が開いた。
「ぎゃっっ!!!?」
「気持ち悪いものを見たような声を出すな」
恐る恐る振り返ってみれば、むっと眉間に皺を寄せている…小十郎。
「いや…どうかしましたか?」
軽く話をそらすと、小十郎は「入る」と言いながらあたしの部屋に足を踏み込んだ。
すっと、あたしの前に姿勢よく座る小十郎を見ながらあたしは黙って小十郎の言葉を待つ。
「愛」
「へっ?はい!」
小十郎が、何か難しい顔をしながらあたしの目をまじまじと見る。
「先ほど政宗様に会ってきた」
「?…うん」
あたしは小十郎が何を話そうとしているのか、よく分からず頭の上にいっぱいのハテナマークを浮かばせた。
「失敬…だが」
「…え?」
こほん、と咳払いした小十郎からは何も感じられずますます分からなくなる。
「政宗様に…何かしたか」
政宗様に…何か…した…?
政宗に…何か…。
「…あ」
「あ゙?」
小十郎のせいでまた思い出してしまった。
自分でも、顔に熱が集まってくるのがわかる。
…これ、バレたらヤバい…?
「…したのだな」
「意味分かんなッ…!……っていうか、どうやったら“あたしが政宗に手を出した”なんて言う話題が出るのよ!?」
「………はぁ…」
「………」
小十郎さん…もうあたしを見る目が完全に変わってますよね。
その呆れたような顔、「こいつ、馬鹿か」とでもいいたそうな顔をしている。
あぁ。
何かとめんどくさい…扱いにくいよ、この人…。