スイートポテト・フィロソフィア
「ちょっと! お会計は?」
「もう払った。行くぞ」
「いや、意味わかんないんだけど!」
勝手に会計を済ませた景の背中に、あたしは思わず大きな声をかけた。
ここで景に奢ってもらう必要なんてない。
いや、払ってもらえるのは単純に有り難いとも思うけど、そんな風に借りを作るような付き合いを、景とはしたくなかった。
「いいんだよ、今日は。俺が払いたいと思ったの。ただ、次からはきっちり割るからな。1円単位まで」
「その方がこっちも気が楽。変に気を遣うようなこと、したくないから」
「わかってる。それは、俺も同じだから」
「じゃあ、今日だけは特別ってことで」
「あぁ。特別だな、今日は」
日も落ち始めたからか、お店の外は思ったよりも寒かった。
周りを見渡すと、さつまいもの皮みたいな色の服を着てる人がたくさんいる。
どうやらあれが、今年の流行りの色らしい。
いい季節になったな、なんて考えて、少し頬が緩む。
「クロ、気持ち悪い。何考えてんの?」