スイートポテト・フィロソフィア
「クロー。カロリー消費しにカラオケでもどう?」
「いいね! それも奢ってくれるの?」
「バカだろ。それは、さつまいも限定サービスだ。しかも気まぐれ」
「ますます好きになりそうだわ、さつまいも」
秋といえばさつまいも。
栗じゃなくて、さつまいも。
カボチャでも柿でも何でもなくて、さつまいも。
これ、あたしの中では絶対の常識。
何となく視線を落とすと、同じリズムで踏み出す影が見えた。
「ねぇ、景。秋だからさ、ドリンクバーにさつまいものソフトクリームあるかな?」
「いや、ないんじゃね? さつまいもって、どっちかっていうと完全にノーマル外れてるから」
「それ、あたしが変人って言いたいの?」
「よくわかってんじゃん。ま、そのクロと付き合う俺だって正真正銘の変人だけどな」
そんな景とあたしを、エビ色の夕焼け空が、ほんのりと染めてくれる。
さつまいもの美味しい季節には、そんなことだって愛しく思える。
これって何だか、すごく不思議だ。
END