スイートポテト・フィロソフィア
石黒千優[いしぐろ ちひろ]
何とか滑り込んだ大学生活は、今年で3年目。
3年目ももう終わりかけだから、いろいろと大変な時期に差し掛かりつつ……いや、もう入ってるかもしれないけど、その辺りは気にしない。
……ことにしている。
目の前でエビの天ぷらにかぶりついてるのは薩摩景[さつま けい]
同じ大学の景は、サークルの同期だ。
“好きな時に好きなスポーツをする”
そんなアバウトなサークルだけど、勧誘から入会までそれなりにアバウトに楽しかったサークルでは、景みたいな変な友人がそれなりにできた。
好きな時に飲んで、時には無駄に真面目な話し合いもして、実はイベントごとに手紙を書き合うのが伝統の変なスポーツサークル。
そんなところで知り合っただけに、景にはあたしのほんの少しのいいところも、その他大半のいいかげんなところも、全部筒抜けだ。
“クロ”っていうあだ名が、石黒の“黒”じゃなくて、毒舌で腹黒いの“黒”から来てるんだってことも、景はよく知ってる。
知っているどころか、その名づけ親が他でもない、景自身だ。
そんなあたしとこうしてバイキングになんか来れちゃう景は、やっぱり相当な変人なんだと思う。
エビが苦手なあたしの前で、堂々とエビの天ぷらを選んでくる辺りも、景だからだ。
もちろん、女友達じゃなくて景を誘うあたしも、相当な変人なのかもしれない。
「俺、次の探してくるわ。クロはまださつまいも?」