スイートポテト・フィロソフィア
「もちろん。いってらっしゃい」
あれはカレーでも取りに行く感じかな。
去っていく景の無駄に黒くそまった髪と、それと同じ色の細身のジーンズを眺めながら、手元のさつまいもを口に運んだ。
身長はそんなに高くない景だけど、だからこそ似合うジーンズと肘の下までめくられたシャツの具合は、結構あたしの好みでもある。
しかも、あたしみたいなコミュニケーション下手な人間とも平等に仲良くなれて、みんなのムードメーカーにもなれるんだから、景は本当にすごいと思う。
少し低い身長だって、チャームポイント的扱いで問題ない。
相手のためにいろんな自分を演出して、且つ、その状況を楽しめる景は、同級生のあたしから見てもできた奴だ。
「いきますか。天ぷら」
うん。 やっぱりさつまいもは最高。
ずっしりしてるのに意外に甘くて、煮たりご飯に入れたりすると予想外に脆くって。
これをさくさくした天ぷらの衣に合わせようなんて……最初に考えた人は天才すぎる。
天つゆに浸した時にちょっと抑えられちゃう甘さの具合だって、何とも言えない。
華麗なる七変化。
いや、それ以上か。
だからあたしは、さつまいもが好きだ。
たぶん、食べ物の中で一番好きだ。
そして、だからこそあたしは、薩摩景とバイキングにまで来る仲になれたんだと思う。