スイートポテト・フィロソフィア
“さつまいも”と同じ文字数で、2文字しか変わらない名前。
そんな奇跡を目の当たりにしてあたしが思わず奇妙な声を上げたのが、あたし達が頻繁に会話を交わすようになったきっかけでもある。
「ちょっと待って! 何でカレーにエビの天ぷら?」
突然目の前に飛び込んできた茶色と薄い黄色の謎配色に、あたしは思わず眉間を寄せた。
フライならわかる。
でも、カレーのトッピングに天ぷらは聞いたことがない。
もちろん、見たのだって初めてだ。
「いや、たまたまコイツが揚げたてだったからつい。俺、クロと違ってノーマルにエビの天ぷら好きだから」
「いや、別にエビが好きだからって、それで一般人の仲間入りができるなんて思わないでよ。景は十分、ノーマルから外れた変人だから」
「じゃあ、そんな俺に付き合えるクロも正真正銘の変人ってことだな」
「……褒め言葉だって受け取っとくわ」
景ほど胃のキャパが大きくないあたしは、当然ながら景よりも食べるのも遅い。
お皿に乗せてくる食べ物の量も少ない。
だけど、1人暮らしのあたしにとっては、このバイキングは今日1日……それどころか、明日の朝食まで兼ねた一世一代の大勝負だ。
さつまいもをおいしく食べるため。
1週間分か1ヶ月分か、とにかくそのつもりで接種するために。
ついでに、さつまいもで贅沢した分のお金をフラットに戻すために。
景を見習って、あたしももう少したくさん食べねばなるまい。