幸せのカケラ
「どこも異常はありませんか?」
「はい」
と、翔が答える。

「あ、あの!」
「どうかしましたか?」
「翔……私のことだけ、分らないって言うんです…」
「もしかしたら…記憶喪失、かもしれません」
「だけど、あたし達のことは分ってますよ?」
と、麻衣子が言う。
「落ちた衝撃時、強く1つのことだけを思っていたのでしょう。
落ちたショックで、その強く思っていたものの記憶だけが消えた、と考えられます」
「そ…んな…。もう…戻ることは、ないんですか?」

「分りません。戻るかもしれませんし、戻らないかもしれません。
ですが、体に異常は特にないようなので、明日検査したあと異常がなければすぐにでも退院できますよ」
「わか…りました」
「それでは、失礼します」

記憶が……ない?


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