甘党狐とココア。
「…ルク?」
ココは小さく呟く。
ルクのしっぽがふわりと振られ、枝分かれするように九本になった。
ノエルが驚いたように赤い瞳を少し見開く。
「おや…貴方は
"銀色の九尾"のルクですか?」
銀色の狐はどうでもよさそうに首を振った。
『だから何、さっきから。ゴチャゴチャうるさいよ?
そんなに殺されたいんだ?』
そう、唸り ルクはノエルに飛び掛かった。
その妖狐は、美しくて、幻想的で。
宝石みたいなオッドアイがきらめきノエルを捕らえる。
しかしノエルは赤い瞳を面白そうに揺らす。
『僕に勝てるとお思いですか?』
そう言ったノエルの声は、少年みたいなあの声じゃなくてー…
恐ろしい、妖怪の声。
ノエルの姿は瞬く間に狼と鬼をまぜたような姿になっていた。
茶の毛並みに赤い瞳。
耳の付け根からは鬼のような角が生えていた。
牙が、するどく光って、妖狐と妖狼がぶつかった。
そこからはもう、人間の目で追える戦いじゃなかった。
気がついた時には、ルクが血だらけで倒れていた。
その正面のノエルも、血だらけで。
人間の姿に戻ると忌ま忌ましそうにルクに言った。
「…次、は…邪魔させません…よ」
そして、風とともに消えた。