甘党狐とココア。
「ココには"苺の血"っていう…まぁさっき言ったけど特別な血が流れてんだ…」
ダニエルはすっと青い瞳を細めて言う。
「治癒能力、増強能力…まぁ他にもあるけどな。
妖怪が強くなる血だ」
ココはちらりとさっき負ったかすり傷を見た。
うっすらと血が浮かんでいるけれどココには特別な血には見えない。
ダニエルは話を続けた。
「多分、妖怪達はココを殺して全部の血を欲しがるだろうな…」
ココは、ただじっと自分の傷口を眺めていた。
頭の中に、ノエルの赤い、獣の瞳がフラッシュバックする。
…死にたく、ない。
たとえ愛されていなくても。
誰も必要としてくれていなくても…
死にたくない。
ココはすっとルクに視線を移した。
銀色の髪。
その瞳はじっと閉じられていて…。
幻想的で、綺麗で…
たった二日ほどのことなのにひどく必要としてしまった。
ココは、そっとルクの頬に触れた。
顔色が良いとはいえないルクの姿にココは悲しくなる。
…この瞳はちゃんとまた開くのかな……?
後ろでダニエルが立ち上がる。
茶色っぽい部屋の中で黒い闇が溶け出しているみたいだ。
「そう落ち込むなよ。俺も居るんだ。守ってやる」
ココはダニエルを振り向き、小さく微笑んだ。
「…ありがとう、ございます…」
ダニエルはぷいっと顔を背けてしまったけれど。
ダニエルのしっぽは少し照れたようにに揺れる。
「じゃあな。俺は向こうの部屋で一眠りしてくるからな。」
そう言って、ダニエルは行ってしまってルクと二人きりになった。
…もちろん、その瞳は開かれていないけれど。