甘党狐とココア。
「それは…?」
ココはやっぱりよくわかなくて再び首を傾げた。
青年は黄金色の眼差しを悲しそうにふっと緩めた。
「人間に怖がられるのが嫌で人間に会うのをやめたのに。
まさか人間が来るなんてね」
青年はふっと笑うとココをじっと見つめた。
「僕の本当の姿がみたい?」
急な問い掛けにココは迷ったがここまで青年が言う、その姿がどんなものかすでに気になり出していた。
「見たいです」
そういうと青年はふと黄金色の瞳を閉じた。
カタカタカタカタ…
近くのコーヒーカップがカタカタと音をたてて小刻みに震える。
次の瞬間ぶわっと音がして青年のまわりを煙のようなものが覆った。
「なに…っ」
ココは目を閉じて息を止めた。
『おわった、開けてみなよ』
不思議な声音が耳に響きココははっと目を開けた。
目の前に居たのは大きな狐だった。
白銀に輝く体毛に黄金色と常碧緑(エヴァーグリーン)色の、オッドアイ。
口には狐とは思えないような鋭い吸血鬼のような牙。
ココは一目見た瞬間、"綺麗だ"と思った。
「綺麗…」
だから、無意識にその感想は口からもれ出ていた。