夕焼け空に泣く
家族
「結(ユイ)~、今日も食パンかよ?」
父親が寝むたそうに
汚い目を擦りながらリビングに現れる
「仕方ないじゃん、みんな給料日前だしー」
大きな態度で父親がソファに座る
私は沸いたばかりのコーヒーを父親の前に置く
「最近寒くなってきたしさぁ、やっぱ温かいみそ汁が飲みてぇな~…ほら、台所にインスタントのやつなかったっけ?」
私は食器を片づけながら
調味料等が置いてある棚を探る
「あぁ~、それなら多分陽(ハル)が食べちゃったかも」
「…かっ、あいつ…!」
父親は恨めしい顔で
陽の部屋の扉めがけて
丸まった靴下を投げた
「…ていうかお父さん、時間大丈夫なの?」
「うん…
…あぁ!
しまった今日は早く行かないとダメなんだよ!」
食パンを丸々残したまま
まだ熱いコーヒーを一口啜って
父親が慌ててスーツを着る
「…ちょっとー!
今、私の鏡踏んだでしょ!」
「…こんなモン、下に置くな!」
母親は今日も帰って来ない
弟は今日も部屋から出てこない
朝田家の朝は
いつもこうして始まる