とある神官の話
電話をぐわし、と掴み誰かと話しているようだ。近くに寄るとヒューズと目が合う。目だけが爛々としていたように見えたために一瞬怯んだ。
「何があったんだ?」
「わかりません。ただ」
「ただ?」
近くにいた神官が「相手はエルドレイス神官のようですよ」と。ゼノン? なんでまた。せっかくシエナが戻ってきたのに奴は何を――――。
受話器を置いたヒューズが溜息。
「異常気象だそうですよ」
「は?」
思わず聞き返した言葉に、ヒューズは説明する。
ゼノンは魔物が出たという村に急遽かりだされたらしい。可哀相に。じゃなくて。その村に到着したゼノンは魔物とともにもえ一つ問題を見つけた。
つい最近、地方で雪が降った。それは俺も新聞で見た。聖都もあと数日間で降るのではないかと言われていた。が、ゼノンが向かった村はすでに真冬状態であったという。おかしなことに、村から一歩出ると全く雪がないそうだ。
つまり、村を囲うように雪が降っているらしい。んな馬鹿な。言った俺に「彼もまた困っているようですよ」と続ける。
「ランジットに連絡をとって向かわせることにしましたが……」
「相変わらず厄介ごとばかりだよな」
頭を掻きむしる。視線をずらせば先程まで無かった書類の山が出来ていた。ヒューズの目が「仕事しろよ」的な顔をしていた。
仕方ねぇ。
俺は黙って席に座った。