とある神官の話



 電話をぐわし、と掴み誰かと話しているようだ。近くに寄るとヒューズと目が合う。目だけが爛々としていたように見えたために一瞬怯んだ。



「何があったんだ?」

「わかりません。ただ」

「ただ?」



 近くにいた神官が「相手はエルドレイス神官のようですよ」と。ゼノン? なんでまた。せっかくシエナが戻ってきたのに奴は何を――――。
 受話器を置いたヒューズが溜息。




「異常気象だそうですよ」

「は?」




 思わず聞き返した言葉に、ヒューズは説明する。
 ゼノンは魔物が出たという村に急遽かりだされたらしい。可哀相に。じゃなくて。その村に到着したゼノンは魔物とともにもえ一つ問題を見つけた。

 つい最近、地方で雪が降った。それは俺も新聞で見た。聖都もあと数日間で降るのではないかと言われていた。が、ゼノンが向かった村はすでに真冬状態であったという。おかしなことに、村から一歩出ると全く雪がないそうだ。

 つまり、村を囲うように雪が降っているらしい。んな馬鹿な。言った俺に「彼もまた困っているようですよ」と続ける。




「ランジットに連絡をとって向かわせることにしましたが……」

「相変わらず厄介ごとばかりだよな」




 頭を掻きむしる。視線をずらせば先程まで無かった書類の山が出来ていた。ヒューズの目が「仕事しろよ」的な顔をしていた。

 仕方ねぇ。
 俺は黙って席に座った。







< 155 / 796 >

この作品をシェア

pagetop