ただ、思って・・・ただ、愛して・・・

「あまり無理はしないでね。もうみんな帰ってるから、二葉さんも帰る?」
「あ、はい。じゃぁ帰ります。」
「わかった。荷物とってきてあげるわ。」
「ありがとうございます。」
先生は保健室から出て行った。
私はベッドから降りて先生の机を見た。先生の机には写真たてが置いてあった。
先生と旦那さんと子供が写っている。
きっと子供が生まれたばかりのころの写真だろう。
三人とも笑顔で写っている。幸せそうな三人だ。うわやましい。
先生はどうやって旦那さんと結婚することになったんだろう。
お互いどうやって気持ちが通じあえたのだろうか。
私はどうやったら修也に思いがつたわるのだろうか。

「二葉さん?」
「わっ!・・・あぁ・・・木村先生。」
「あら、写真見てたの?可愛いでしょ。私の娘と隣が夫。」
「そうなんですか。」
「あ、鞄。」
「ありがとうございます。」
「お大事にね。」
「はい。」
私は保健室から出た。
さすがにまだきつい。熱っぽい。
今頃、美花と修也は一緒に楽しく帰っている頃だろう。
下足箱で靴に履き替えて外に出た時だった。

「修也ぁぁ!一緒に帰ろっ!」
「おうっ!」
二人の声が響いて聞こえた。
私はいきなりのあまり、動くこともできなかった。
二人の姿を見るとは思ってもいなかった。
二人の楽しそうなかおが私の目にうつる。


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