タイトルなしの物語
あれは確か、俺たちが入学したての中1の頃だ。
「私、お友達が全然できないの」
いつもと同じ帰り道、朱莉が俺と太陽に相談してきた。
「私…自分から話しかけるの怖いし…」
朱莉は知らない子には自分から話しかけることができない。
しかも、朱莉のクラスには同じ小学校だった子が1人もいなかった。
俺と太陽も違うクラスだった。
それに、小6の時の怖い経験も関係していると思う。
「もうすぐ宿泊研修あるでしょ?」
俺は頭の中でそうだっけ?なんて呑気に思った。
「もし…もしだよ?好きな人と組めって言われたら…」
朱莉は本当に不安そうに言った。
「そんな心配すんな。何とかなるって」
太陽がそう言って励ましたけど、効果はなさそうだった。
俺と太陽は本当に朱莉のことが心配になった。