タイトルなしの物語
「なかなかいない名前だしな…」
たまに紫の音と間違えられるし、女子と間違われたこともある。
「でも真由は覚えてもらってるのに…」
建物に戻っていった真由ちゃんを目で追いながら瑞恵が言った。
「瑞恵は偉いよ」
「え?何、急にどうしたの?」
別にどうしたって訳ではない。
ただ、いつも思っていることを言っただけだ。
「あ…でもありがとう」
瑞恵は少し間を置いて言った。
「うん。俺もそろそろ帰るかな…」
再び瑞恵に軽くキスをして、家への道を歩いた。