タイトルなしの物語
「うわぁ…可愛い」
売店には、おしゃれな物がいっぱいある。
地元の人達の手作りらしい作品や、ガラス製品。
有名なお菓子もたくさんある。
「檜垣、落ちたよ」
突然名前を呼ばれて振り返ると、担任の真木(マキ)先生が立っていた。
「ありがとうございます」
そう言って受け取ったのは、小さくてクマの形をした小物。
6歳の誕生日プレゼントに太陽がくれた物。
もし真木先生が拾ってくれなかったら、私はきっと大変なことになってたと思う。
「大切な物なんだ?」
「はい。昔、大切な人からもらったんです」
真木先生は女性だけどサバサバしているから、私は何でも話せてしまう。
「そっか…その人は幸せだね。檜垣に大切に思われて」
私は真木先生の言葉に思わず胸がいっぱいになった。