タイトルなしの物語
scene3<過去の思い出>
「あ、紫苑!」
ぼんやりと昔のことを思い出していた私は、瑞恵の声で我に返った。
「あれ…太陽と一緒じゃないの?」
紫苑の隣にはいつもいる太陽がいない。
「おい…勝手に消すな」
「なんだ…トイレだったの」
太陽はトイレから出てきた。
「ん?それ…」
太陽が私の右手に目を向けた。
私の右手には、さっき真木先生が拾ってくれた小物が握られている。
「まだ持ってんの?」
太陽がとげのある言い方をするもんだから、私は右手を隠すようにポケットに入れた。
「わ…悪い?」
ついついこんな言い方をしてしまう私。
太陽は黙って歩いて行っちゃった。