タイトルなしの物語
コンコン…。
薬を飲んで少し経った時、ドアをノックする音が聞こえた。
「…はい?」
「瑞恵でーす」
私はドアを開けて瑞恵を中に入れた。
「ちゃんと飲んだ?」
「うん、当然でしょ?」
瑞恵はやっぱり私のお姉さん的存在。
他人の薬の世話をできる人なんてなかなかいないよ?
「そういえば…瑞恵はどうして紫苑が好きになったの?」
2人が付き合って結構経つけど、聞いたことなかった。
「え?何よ急に…言ってなかったっけ?」
私が頷くと、瑞恵は恥ずかしそうに顔を赤くした。
「中3の運動会…かな?」
「…何かあったっけ?」
私は記憶を引き出そうとするけど、特に何もない。
「ほら、前期の応援やったでしょ?」
ああ…中学生だけでする応援合戦?
「その時ね…」
瑞恵はかわいく頬を染めたまま話し始めた。