タイトルなしの物語
中学3年生の運動会…。
「みんな声出せよー!」
応援団長はすでに枯れた声を張り上げている。
「私たちトリだからね?頑張ろうね!」
私も周りにいる女の子の後輩にそう言って呼びかける。
「ねーねー、瑞恵。今ってお茶飲んでもいいかな?」
のどが渇きましたって感じで聞いてくる朱莉。
「サッと飲んだら大丈夫じゃない?」
私がそう言うと、全速力で水筒まで言って、全速力で戻ってきた。
そのタイム約20秒。
笑いながら見ていた私の視界の端に、何かが映った。
「大丈夫?気分悪い?歩ける?」
紫苑だった。
熱中症かな?
体調が悪そうな中学1年生の男子を気遣っている。
朱莉の幼馴染だから、私もいつも一緒にいる。
「大丈夫?」
紫苑がキョロキョロしていたから、私は近づいていった。