タイトルなしの物語
紫苑が話し終わった後、瑞恵は泣いていた。
当然か…瑞恵は朱莉の親友だもんな。
「朱莉はそれ以降ずっと俺たちとお父さん、弟以外の男と極力関わらないようにしてきた」
「でも…光野は大丈夫だったよ?」
「信用してたんだろ?」
俺は久しぶりに口を開いた。
「…たい…よ?」
ベッドの方から弱弱しい声が聞こえた。
「朱莉…起きた?」
朱莉はどうして部屋に俺と紫苑がいるのか分かってないみたいだ。
「俺たちも朱莉が心配だったんだよ」
紫苑が言うと、朱莉は小さくごめんねと言った。
「謝るなって…」
俺が言うと、朱莉の目から涙が流れた。