タイトルなしの物語
「誰かさんのせいで買えなかったから売店で買った」
そう言って私の手に握らせた。
彼女にあげるんじゃなかったんだ…。
そう思って安心した。
「彼女にあげたから」
太陽の口から聞こえた言葉。
太陽には私の心の声が聞こえるの?
「…朱莉の場合は顔に出すぎなんだよ」
そう言ってフッと笑った。
「あ…もうすぐ消灯時間じゃない?」
「あ…やば。紫苑は廊下?じゃあ瑞恵戻すから」
おやすみって言って太陽は出て行った。
「おやすみ…」
私がそう言うのとほぼ同時に瑞恵が戻って来て、特に何かを話すこともなく私達は眠りについた。