タイトルなしの物語
「太陽、あのね?」
落ち着いた私は、夢のことを話し始めた。
「夢を見たの。夢の中で、太陽の声が聞こえた」
「俺の?」
「うん。でもね、周りは真っ白で何も見えなかった」
「…」
「次にね、春香の声が聞こえたの」
「春香の?」
春香は、中学3年生の私の妹。
「うん。春香の姿ははっきり見えて…」
私は続きを言いたくなくなった。
「追いかけても追いつけなくて…消えちゃったの」
太陽の顔が一瞬だけゆがんだのが分かった。
「私…怖い。太陽も、春香もいなくなっちゃうんじゃないかって…」
「大丈夫」
太陽が私の言葉を遮った。