タイトルなしの物語
「何の保証もないけど、俺はいなくならない」
俺は朱莉の目をまっすぐ見て言った。
「春香も大丈夫だよ。いなくなったりしない」
俺は、自分に言い聞かせてもいた。
何故か朱莉の夢のことを聞いたら、朱莉がいなくなるような気がしたから。
ある日突然、俺の手の届かない所に行ってしまう気がしたから。
「そう…だよね?大丈夫だよね?」
俺は朱莉の手を握って何度も何度も頷いた。
「…もう大丈夫?」
どこかに行っていた真木先生が戻って来た。
「あ…はい。ごめんな…」
「はい、そこまで。誰も迷惑だなんて思ってないし…言うんだったらお礼にしてよ」
いつものように先生に言われたら反抗できない。
「はい…ありがとうございます」