tea
桜がぎゅって握れば私も同じようにぎゅって力を入れ返す。

桜の手はなんだか自分の手と手を合わせたみたいにぴったりしてて、それがあまりにもしっくりしすぎてて私はとっても心地よかった。

パールがかった薄いピンクのマニキュアにハートモチーフのピンキーリング。


桜がつけてるものは何でも可愛く見えちゃうのは、小さいときからの私の癖なのかなぁ…それともただのひがみだったりして…
なーんて、そんなことはあるわけない。
うん、ありえない…


「へっ?」


桜が急に変なこと言うから間抜けな声をあげちゃった。

『葵ちゃんは可愛いよねっ』って…そんなこと…


「はいはい、ありがとね」


可愛い人から可愛いって言われたときのこの感じ。
桜のこと嫌だとか思うわけじゃないけど、からかわないでよって思っちゃう。

からかってなんかいないのに、本気なのに、と言って拗ねる桜を見てると、ずっとずっとこうしてたいって思っちゃう。

そんなこと考えてるうちにもう駅まで着いちゃった。
達也元気かな…ふとそんなことを思った。
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