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｢えぇと…渡辺桜ちゃん？｣


今まで耳にしたことない声で呼ばれて、かなり驚きながら振り返ると私の苦手なマネさんがいた。

こうやって近くで見るのは初めてかな…

あたしは怪訝そうな顔つきて軽く会釈する。


｢やっぱりー！すぐわかってよかった。｣


そう言ってにこにこ笑う彼女はいかにも感じのいい人って雰囲気で、あたしはちょっとだけ申し分ない気持ちになっちゃった。


｢優斗とは高校からの仲だけど、まさかこんなに可愛い妹がいたなんてねぇ…｣
あれ…この人知らないんだ、あたしたちのこと…。


｢えっと…桜ちゃんはもう体育大が決まってるんだよね？私なんてやりたいこともないし、うらましいなぁっ｣


｢やりたいことだなんて…ただ陸上しかできることがなかっただけですよ｣


それは建前とかじゃなくて本当の話で、葵ちゃんみたいに勉強もできないあたしには本当に他になにもなかったんだ…。
実は小学校や中学校のマラソン大会だって葵ちゃんと五分五分だったし、本当に葵ちゃんよりできるのって短距離だけなのかな…。


｢変なこと言っちゃったかな、ごめんねっ｣


そう謝ると彼女はサラッと別の話題に変えてしまった。
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