tea
音が鳴らないように携帯を持つと、ジャラジャラとストラップが揺れる。

私はきっとずいぶん真剣な目でその携帯を見つめていたんだと思う。
だから桜が帰ってきたことに全く気付かなかった。


「だーれだっ」


嬉しそうな桜の声。
私はやれやれと息をつくと手を目元からとった。


「愛しの優斗くんから電話きてたよ」


私がニンマリ笑うと桜の顔がポッと赤くなった。
そして慌てて携帯を確認すると、今度は不思議そうに首を傾げた。

どうやら今日はサークルの練習があるそうなのだ。
だから連絡があるはずはないと…


「なら桜からかけ直せばいいんじゃない?」


私はサラッと言った。


「んー…今日は葵ちゃんdayだからいいのっ」


そうやってぎゅって口角をあげて笑う桜が、私は1番好き。
桜がそう言ってくれることで私も桜の1番なんだって実感できるとき、私はきっと1番幸せ。
そう、きっと…


「お兄ちゃんならいつでも会えるからいいの。今日は葵ちゃんと月に一度のデートなんだもんっ」


そうやってまた笑う。


あぁ…私もやっぱりこんな風になりたかったなぁ…
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