tea
はっと目を開くと乾いたコンタクトが目に張り付いて、世界がくもって見えた。


やだ、もう8時だよ…早く帰らなきゃ。


重い体を起こして静かに服を着る。隣でぐっすり眠っている達也を起こさないように。

まだ達也の感触が残ってるよ。
それにいつもいつもたくさん私の名前を呼んでくれるから、耳にまでその響きが残ってるみたい…



「葵っ」


「…あ…おい…」


「あおい」


時には意地悪に、時には苦しそうに、そして時にはとても愛おしそうに。
その度に私の胸は切なさでいっぱいになるのに…。

私は最中に声を漏らしちゃうことはあっても、達也の名前を呼んだことは一度もない。
それなのに達也はずっと、ほんとにずっと私の名前を囁いてくれる。


一度も呼んだことないのに、不思議に思わないの…?
俺のも呼んでよって、いつもみたいに強要しないのはどうして…?

どうしてそんなに優しいの……?



頭の中を駆け巡る疑問。
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