tea
「はぁっ…」


ピッ……ピピピピピー


ドアがしっかりロックされたことを確認して家路につく。結局達也はあのまま起きなかった。

ちょっと寂しいなんて思っちゃう自分に嫌気がさしちゃうな…
図々しいよ、葵。


トントントントン…と足早に階段をおりると、冷たい空気が頬にあたって気持ち良い。
部屋がちょっと暑かったから、やっぱりこれくらいがちょうどいいみたい。


「はぁ…」


気付けばさっきからため息ばかりで、このままじゃ幸せが逃げちゃうよね…って、そもそも私には幸せなんて存在しないんだ…。


「はははっ…」


自虐的に笑ったことでよけいに惨めな気持ちになった。

私が葵みたいに素直で、自分の気持ちをちゃんと言える子だったら…
あんなふうにもっとちゃんと好き嫌いを言える子だったら…

もっとなにか変わってたかもしれない。

空を見上げるとそこには雲ひとつなくて、明日は雨という予報が嘘に思えた。
私の視界にあるのは暗い暗い青色といくつかの星、そして十五夜を過ぎたばかりの月。


まるで私たちみたいな、そんな光景。
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