tea
達也とは半年ぐらい前、そう、高3の春に初めて会った。

どちらといえば静かを好み新しいクラスでもおとなしく過ごしていた私にとって、達也の第一印象は“うるさい人”だった。

始業式の朝チャイムと同時に教室に入ってきたかと思えば、軽く冗談を言ってクラス中を笑わせて、先生ともうちとけ、あっという間にムードメーカーになって。

男子からも女子からも好かれていて、いつでもどこでも元気に笑っていた。
それは休み時間であろうと授業中であろうと変わることはなく、何度も先生に怒られていたっけ。


気がつくと私は彼を見て微笑んでいた。



「勝又って英語得意なんだな」


たまたま隣の席になったときに、採点が終わった小テストを交換しながら彼は言った。


それから少しずつ会話が増え、あるとき彼の家庭の話になった。
彼のお兄さんはよくできた人で、優しくて勉強も運動も万能で本当に尊敬していると。
しかし彼の両親はお兄さんばかりに目をむけて、なかなか彼を見てくれない。


悲しそうに笑った彼はそれでも俺は頑張ると言って、スパイクについた泥を落としていた。
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