猫が好き!


 折しも慌ただしくホテルを飛び出すシンヤを見かけ、怪しいと踏んで後をつけたのだ。
 そいつは真純をシンヤの恋人だと勘違いしたようだ。

 翌日、商談のため訪れた辺奈商事で、瑞希と話している真純を見たそいつは、野心にとらわれたらしい。

 シンヤが”シンヤ”であるという確たる証拠はない。
 会社に知らせたとして、自分にも会社にも、何のメリットもない。
 もしもシンヤが逮捕されたとしても、せいぜい警察からの感謝状止まりだ。
 それより弱みを握っているシンヤを利用しようと考えた。

 そいつの会社は辺奈商事の取引先で協力会社であると同時に、同業種ではライバル会社でもある。

 辺奈商事の経営に関する情報が手に入れば、会社は優位に立てる。
 その情報を自分が提供できたら、出世や昇給が見込めると考えたのだろう。

 そいつは、つい最近シンヤのネット販売を利用した事があった。
 ダメ元で、その時知ったアドレスに、メールを送ってきたらしい。

 破棄しようと思っていたアドレスに、突然やって来たメールにシンヤは驚いた。
 そこにはシンヤの居場所である真純の住所や、真純の勤務先、瑞希と知り合いである事などが書かれている。

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