猫が好き!


 自分より六つも年上の先輩が、平身低頭している様は気の毒で、責める事が出来なかった。

 出来上がったパッケージソフトは、そこそこ売れたようだ。
 それにより先輩は会社から褒賞金を受け取ったらしいと同僚から聞いたが、先輩から進弥へは何の話もなかった。

 少しして再び進弥の提案した企画が、先輩の名前で採用された。

 二度目ともなれば、手違いでない事は分かる。
 先輩も今度はごまかすつもりがなかったようだ。
 前回の功績が認められている自分の名前だからこそ、採用されたのだと開き直った。

 このままここにいても、自分の業務経歴にはならず、先輩に功績と褒賞金を与える事になるのかと思うとバカバカしくて、進弥は会社を辞めた。

 今度は上手く立ち回ろうと別の会社を当たってみたが、世の中は甘くなかった。

 入社一年未満で自主退職した進弥の履歴書は、人事担当者に受けが悪い。
 おまけに業務経歴はほんの二、三で、担当作業はプログラミングのみ。

 経験値がものを言う中途採用では、分が悪すぎる。
 大概は書類選考で落とされ、面接までこぎ着ける事は稀だった。

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