猫が好き!


 言われるままに助手席に乗り込みシートベルトを締めると、男は真純にアイマスクをつけ、帽子を目深にかぶらせた。

 視界が奪われ、相手が何をしているのか分からなくなる。
 うかつな行動も取れず、真純は何も出来ないまま車で連れ去られた。

 しばらく車で走った後、目隠しをしたまま手を引かれて、わけのわからないうちに、今のような状態にされてしまった。

 男は真純を縛り上げた後、ポケットから携帯電話を取り上げた。
 そして帽子とアイマスクを外す。
 眩しくて目を閉じたところを、いきなり写真に撮られた。


「お、いいね。この表情」


 撮った写真を見て、男が楽しそうに言う。
 絶対に、いい表情なわけがない。

 男は少しの間、真純の携帯電話を操作して、机の上に置いた。

 真純の電話には、シンヤの番号とメールアドレスが登録してある。
 おそらくシンヤに、メールで写真を送ったのだろう。

< 117 / 354 >

この作品をシェア

pagetop