猫が好き!


 シンヤは男を睨みつけた後、突き飛ばすようにして手を離した。
 そして男を目で牽制しつつ、真純の元にやってくる。

 側まで来たシンヤは、真純の背後に回って、腕を縛った縄をほどき始めた。
 男は先ほどのシンヤの剣幕に恐れをなしたのか、少し離れた場所から様子を見ながら声をかけてきた。


「辺奈商事の情報は持ってきたのか?」


 シンヤは手を止めることなく、苛々したように言う。


「それは断っただろう。何度も言わせんな」


 腕の縄がほどけて、真純は身体を起こし、口に貼られたガムテープをはがしにかかった。
 シンヤは続いて、足の縄をほどき始める。

 完全に蚊帳の外に置かれた男は、声を荒げた。


「おい! その女がどうなってもいいのか?!」

< 122 / 354 >

この作品をシェア

pagetop