猫が好き!


 足の縄をほどき終わったシンヤは、立ち上がった。
 真純も立ち上がると、シンヤは片手で真純を自分の後ろへ下がらせた。

 そして、呆れたように嘆息して言う。


「あんた、バカだろう。人質ってのは自分の手元にあってこそ意味があるんじゃねーの? そんな離れたとこにいて何言ってんだよ。まぁ、元々頭悪い奴だとは思ってたけど」

「何?!」


 シンヤの言葉に、男は頬を紅潮させる。

 ハラハラしながら見守っていると、シンヤは落ち着いた様子で言葉を続けた。


「この間のメール、会社のアドレスで送ってきただろ」


 確かにあまり賢いとは言えない。

 容易に変更できない会社のメールアドレスを、誰だか分からない相手に明かすなど、コンピュータに詳しくない真純でも絶対にしない。

 おまけに相手は、ハッカーだと分かっているのに。

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