猫が好き!
「冗談だってば」
冗談にしては、用意周到すぎる。
再び犬かぶりに戻ったシンヤが、情けない声を出した。
「僕、来週までに住所を固定しろって言われてるんだよ」
「何? おまえ、ここに定住するつもりなの?」
「ダメ?」
門扉の上に両手をかけて、身を乗り出したシンヤが、小首を傾げる。
その姿があまりにも犬っぽくて、真純は思わず吹き出した。
この大型犬を飼う事は、瑞希もあらかじめ承知していただろう。
真純は笑いながら門を開き、シンヤを招き入れた。
「おかえり」
「ただいま!」
シンヤは嬉しそうに笑いながら、元気よく返事をして門をくぐった。
(第1部 完)