猫が好き!


 優しい言葉にすっかり毒気を抜かれて、真純は小さく頷く。


「うん。ちょっと眠いだけ」
「そっか。ホント酒強いね」


 そう言って一層細められたシンヤの目に、邪な光が宿ったように見えた。

 ——黒シンヤ降臨?

 ドキリとして身構えようとした時には、すでに遅かった。
 掴まれた手首をベッドに押さえつけられ、あっという間に上向きにされた身体の上に、シンヤがのしかかってきた。

 真純を見下ろすシンヤの表情は、明らかに黒シンヤだ。


「おまえ、さっきまでかぶってた犬は?」
「朝の散歩に出かけたよ」
「すぐに連れ戻してきなさい!」
「やだ」


 空いた手で肩を押さえて押し戻そうとするが、真純の抵抗などものともせずにシンヤは距離を詰めてくる。

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