猫が好き!


 店内を一巡した後、見るともなしに雑誌をめくりながら、ふと思い出した。

 週末に花見をしようと約束した、桜並木が近くにある。
 河川敷の遊歩道に沿って植えられた桜並木は、水場もトイレもない。
 そのため、ライトアップはされているものの、飲食物持参で腰を据えた花見客はいない。
 所々ベンチはある。
 一人きりで頭を冷やすには、ちょうどいいような気がした。

 進弥はペットボトルのホットカフェオレを買って、コンビニを出た。

 狭い道路を渡り、土手に作られたコンクリートの階段を上って河川敷の遊歩道に出る。

 案の定、人気はない。
 所々に立っている街灯が、桜並木を白く浮き上がらせていた。

 灯りの下のベンチを求めて少し歩いた時、進弥はギョッとして立ち止まった。
 街灯の真下にあるベンチに女の子が座っていたのだ。

 見た目は高校生くらいだろうか。
 片方のサンダルを脱いで、ベンチの上に足を上げ、自分の踵を見ていた。

 この遊歩道は、通勤通学路にもなっている。
 先ほどから二台の自転車が、進弥の脇を通り過ぎていった。

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