猫が好き!
男も少女の様子を訝っているようだ。
会社の花見帰りなのか、少し酔っているようで顔が赤い。
ちょうど街灯のない木の陰に立っている進弥の姿は、男からは見えていないらしい。
男は少しの間少女の様子を眺め、口元に微かな笑みを浮かべた。
その視線は、ベンチの上に投げ出された少女の白い素足を捉えている。
少女の方は自分の世界にどっぷりと浸りきっているようで、自分の後ろで男が立ち止まっている事に気付きもせず、相変わらず泣き続けていた。
男が少女に向かって、一歩踏み出した。
マズイ!
(あぁ、放っとけばいいのに!)
後悔と同時に、進弥は少女に向かって小走りに駆け寄っていた。
「悪い! 遅れてごめん」