猫が好き!
笑顔で声をかけると、少女は泣き止み、ポカンとして進弥を見上げた。
そんな反応はお構いなしに、少女の隣に腰掛ける。
「ちょっと遅れただけで、そんなに泣く事ないだろ?」
声をかけながらチラリと男の様子を探る。
男は進弥を一瞥し、何食わぬ顔でベンチの前を通り過ぎて行った。
どうやら強引に絡んでくるほどには酔っていないようだ。
それは進弥としても、ありがたかった。
身体は大きい方だが、決して腕っ節に自信があるわけではない。
見ず知らずのうかつな女子高生のために、無用な争いはしたくなかった。
ほどなく男の姿は、並木の外れの闇に紛れていった。
それを見送ってホッと息をついた時、隣からさっきまで号泣していた少女が、冷めた調子で声をかけてきた。
「誰?」
自分の置かれていた状況を全く理解していない様子にムッとして、進弥はそっぽを向いたまま言う。