猫が好き!


 笑顔で声をかけると、少女は泣き止み、ポカンとして進弥を見上げた。
 そんな反応はお構いなしに、少女の隣に腰掛ける。


「ちょっと遅れただけで、そんなに泣く事ないだろ?」


 声をかけながらチラリと男の様子を探る。
 男は進弥を一瞥し、何食わぬ顔でベンチの前を通り過ぎて行った。

 どうやら強引に絡んでくるほどには酔っていないようだ。
 それは進弥としても、ありがたかった。

 身体は大きい方だが、決して腕っ節に自信があるわけではない。
 見ず知らずのうかつな女子高生のために、無用な争いはしたくなかった。

 ほどなく男の姿は、並木の外れの闇に紛れていった。
 それを見送ってホッと息をついた時、隣からさっきまで号泣していた少女が、冷めた調子で声をかけてきた。


「誰?」


 自分の置かれていた状況を全く理解していない様子にムッとして、進弥はそっぽを向いたまま言う。

< 192 / 354 >

この作品をシェア

pagetop