猫が好き!
「ねぇ、お遣いの対価として、ひとつお願いがあるんだけど」
「何?」
「今夜、マスミさんの家に泊めてくれない?」
彼女は訝しげに眉を寄せる。
「なんで私の名前知ってんの?」
「タスポに書いてあるよ」
「あ、そっか。いいよ」
「えぇ?!」
あまりにあっさり承諾されて、進弥の方がうろたえた。
「本当にいいの? 素性の分からない男を。あ、家族と同居とか?」
「ひとりだけど」
「だったらなんで?」
「自分から言っといて、何慌ててんの? それともおまえは、初対面の女を会ったその日に襲うような野獣なの?」
「いや、そこまで無節操じゃないけど」
「じゃあ、問題ないじゃん。家は無駄に広いから、ドキドキして眠れないなんて事はないから安心して」
「うん……」
「じゃあ、買い物よろしく」
彼女は笑顔で、進弥の背中を叩いた。
とりあえず今夜の寝床は確保できたものの、なんだか釈然としないものを感じながら、進弥はコンビニに足を向けた。